新型コロナワクチンについて

  • 2021.02.15

先日、オンラインで県医師会による新型コロナウイルスワクチンの勉強会がありました。新型コロナワクチンについては、いろいろと不安に思っている方も多いと思いますので、今回の情報を共有したいと思います。

新型コロナワクチンの原理
新型コロナウイルスはその表面にスパイクタンパクという小さなトゲを持っています。このトゲが人間の細胞にくっつくことで感染します。そこで、この小さなトゲをワクチンによって人間の体のなかで作らせると、そのトゲに対するミサイル(抗体)や免疫細胞が作られます。これで新型コロナウイルスにかかったのと同じ状態になり、感染から体を守るというのが、新型コロナワクチンの原理です。ウイルスそのものを誘導するわけではないので、抵抗力の落ちている人でも安心して接種することができます。

新しいワクチンの誕生
現在、日本で使用されているワクチンは、ウイルスそのものを弱毒化した生ワクチン(MRワクチンや水痘、おたふくワクチンなど)と、不活化したワクチン(Hibワクチンや肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンなど)があります。例えば、インフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスを卵の中で増やし、それを不活化して作るのですが、新型コロナウイルスではなかなかうまくいかないようです。今回、新しく開発されたワクチンは、ウイルスの一部の設計図を人間の細胞に読み込ませ、設計図に書かれたタンパクを作り出し、その免疫を誘導するというものです。ウイルスに組み込んだものがベクターワクチン(アストロゼネカ社)、メッセンジャーRNA(mRNA)に組み込んだのものがmRNAワクチン(ファイザー社、モデルナ社)です。

mRNAワクチンについて
mRNAはとても不安定な物質で、そのままではすぐに壊れてしまいます。そこでポリエチレングリコール(PEG)という油で包むことで、人間の細胞に取り込めるようになります。それでも超低温で保存しないといけないとか、振動に弱いなど、非常にデリケートな物質です。mRNAワクチンを打つと、そこに新型コロナウイルスのスパイクタンパクに関する設計図が入っているので、スパイクタンパクが作られるようになります。mRNAは10日ほどで分解され、体に残ることはありません。また人間の遺伝子に組み込まれるということもありません。このことから、生ワクチンと違って、長期的な副反応は起こりにくいとされています。どのくらい効果が持続するかについては、今後の研究結果を待つ必要があります。

新型コロナワクチンの効果は
これは新聞などでも報道されているように、きわめて高い効果が期待できます。例えばファイザーのワクチンは、発症を抑える(95%)、重症化を予防する(89%)など、優秀な成績が報告されています。ちなみにインフルエンザワクチンの発症を抑える効果は50%前後です。ただし、他に人に感染させない効果については、まだはっきりしていません。したがって、接種後も感染予防対策を引き続き行っていく必要があります。

コロナワクチンの副作用は
最も多い副作用は接種部位が痛い、腫れるなどの局所に症状で、他に発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛など、インフルエンザワクチンでよくみられる副反応と同じものが報告されています。副反応は1回目よりも2回目の方が、お年寄りよりも若い人の方が出やすいようです。mRNAを包む物質(PEG)に対するアナフィラキシーという強いアレルギー反応が20-40万人に一人の頻度で報告されています。これはインフルエンザワクチンの約2-4倍ですが、抗生剤の100分の1です。

子どもや妊婦さん、授乳婦さんは大丈夫
子どもさんや妊婦さん、授乳婦さんは前もって行われた臨床試験に参加していないため、データがまだありません。ただ子どもは重症化する例がほとんどないため、今回はワクチン接種対象者から外れています。妊婦さんについては、動物実験では安全とされ、接種後に妊娠が分かった人からも有害な副反応は報告されていないようです。また授乳婦さんについては、ワクチンの性質上、母乳には出てこないので、問題ないとされています。

変異株にも有効か
イギリス株や南アフリカ株など、コロナウイルスの一部が変異しているものが報告されています。この変異株とは、さきほどのスパイクタンパクがわずかに変化したものです。ごくわずかの変化であれば、ワクチンで誘導される抗体の効果に問題はないようで、南アフリカ株のようにいくつかの変異があるものに対しても多少抗体の力が落ちるものの、ワクチンの効果自体は問題ないようです。またmRNAワクチンの特徴として加工しやすく、今後の変異株に対してもすばやく対応できるようになるでしょうとのことでした。

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